―生涯で21本の映画を残した監督であり、80年代より第一線で活躍し続けたCM演出家。このサイトでは2008年9月に亡くなった市川準の仕事を紹介しています。
1987.10.31|『BU・SU』 【出演】富田靖子、丘みつ子、大楠道代、伊藤かずえ、高嶋政宏、イッセー尾形 ほか
1988.11.26|『会社物語』 【出演】ハナ肇、西山由美、植木等、谷啓、犬塚弘、桜井センリ ほか
1989.12.16|『ノーライフキング』 【出演】高山良、原田慎也、山崎康平、鈴木さえ子、中村伸郎、イッセー尾形 ほか
1990.10.20|『つぐみ』 【出演】牧瀬里穂、中嶋朋子、白島靖代、真田広之 ほか
1991.11.23|『ご挨拶』(オムニバス第2話「佳世さん」) 【出演】米山曼舞子
1993. 7.24|『病院で死ぬということ』 【出演】岸部一徳、山内明、塩野谷正幸、七尾伶子、石井育代、橋本妙、田村廣
1993.10. 8|『欽ちゃんのシネマジャック(きっと、来るさ)』 【出演】萩本欽一、高泉淳子
1993.10. 9|『クレープ』 【出演】田代まさし、南果歩、堀江奈々、渡辺いっけい、大久保鷹、向井田彩子、加倉井えり
1995. 1.14|『東京兄妹』 【出演】緒形直人、粟田麗、手塚とおる、広岡由里子、小池幸次 ほか
1996. 3.23|『トキワ荘の青春』 【出演】本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ、大森嘉之、古田新太 ほか
1997. 6.21|『東京夜曲』 【出演】長塚京三、倍賞美津子、桃井かおり、上川隆也 ほか
1998.12. 5|『たどんとちくわ』 【出演】役所広司、真田広之、根津甚八、田口トモロヲ、桃井かおり ほか
1999. 3.27|『大阪物語』 【出演】池脇千鶴、南野公助、沢田研二、田中裕子、ミヤコ蝶々、剣太郎セガール
2000. 7. 7|『ざわざわ下北沢』 【出演】原田芳雄、樹木希林、渡辺謙、鈴木京香、豊川悦司、田中麗奈、広末涼子 ほか
2001. 5.12|『東京マリーゴールド』 【出演】田中麗奈、小澤征悦、斉藤陽一郎、小林沙世子、長曽我部蓉子 ほか
2002. 9.14|『竜馬の妻とその夫と愛人』 【出演】木梨憲武、中井貴一、鈴木京香、江口洋介、橋爪功 ほか
2005. 1.29|『トニー滝谷』 【出演】イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、四方堂亘 ほか
2006. 1.21|『あおげば尊し』 【出演】テリー伊藤、薬師丸ひろ子、絵沢萠子、大倉孝二 ほか
2007. 4.28|『あしたの私のつくり方』 【出演】成海璃子、前田敦子、高岡蒼甫、近藤芳正、奥貫薫、田口トモロヲ ほか
2009. 4.11|『buy a suit スーツを買う』 【出演】砂原由起子、鯖吉、山崎隆明、三枝桃子 ほか
2009. 4.11|『TOKYOレンダリング詞集』
『BU・SU』
公開日:1987.10.31 上映時間:95分
製作:東宝映画 アミューズ・シネマ・シティ 配給:東宝東和
【スタッフ】製作:小倉斉 プロデューサー:平林邦介、出口孝臣、中沢敏明 脚本:内館牧子 撮影:小林達比古 編集:奥原好幸 音楽:板倉文 主題歌:原由子『あじさいのうた』 助監督:天野敏広
【出演】富田靖子、丘みつ子、大楠道代、伊藤かずえ、高嶋政宏、イッセー尾形、白島靖代、室井滋、伊織祐未、輪島功一、中村伸郎、すまけい
★第6回ファーイースト映画祭招待('04) ★キネマ旬報ベスト8位
市川準監督デビュー作。性格が“ブス”な女の子が、上京して様々な経験を重ねる中で自分の殻を打ち破って成長していく姿を描く。18歳の森下麦子は片田舎で生まれ育ち、性格がめいいっぱいひねくれてしまった“心のブス”な女の子だった。悪い噂であふれた故郷から逃げるように上京し、芸者置屋を営む叔母のところへ行く。鈴女という名前をもらい、芸者見習いをしながら高校に通うことになる麦子だったが、転校した高校にも馴染めず、厳しい芸者修行にも身が入らず、心の空洞を抱えたまま日々過ごしていく。やがてボクシング部の律田に思いを寄せるが、彼には京子という彼女がいた。あるとき、置屋の老人・辰巳がそんな鈴女を見かねて八百屋お七の墓へ連れて行く。そして、これまで憎んでしかいなかった母・雪乃の過去を初めて聞かされる。彼女の中で何かが少し変わり始めていた…。
【市川準監督コメント】
「映画を見て、とまどう人もいるんじゃないですか。暗いし、重いし、笑えないし(笑)。でも、やっぱり富田靖子の視線とか存在とか、そういうものがバーンと残っているような映画のほうが映画として正しい。そこで僕が面白CM作家然としてね、なにか変なものを注入していったりする必要は何もないんじゃないですか」キネマ旬報87年11月上旬号掲載インタビューより)
『会社物語 MEMORIES OF YOU』
公開日:1988.11.26 上映時間:99分
製作:松竹 日本テレビ放送網 SEDIC 坂本事務所 配給:松竹
【スタッフ】製作:坂本敏夫 プロデューサー:中沢敏明 脚本:鈴木聡、市川準 撮影:小野進 美術:菊川芳江 編集:富宅理一 音楽:板倉文 助監督:米山紳
【出演】ハナ肇、西山由美、植木等、谷啓、犬塚弘、桜井センリ、安田伸、石橋エータロー、伊東四朗、水野花、すまけい、村松友視、ジャイアント馬場、イッセー尾形、余貴美子
サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ、と言われたのは昔の話。現在は上司に部下にOLに、おまけに女房、家族までがストレスの素、この辛さ、切なさは体験した者でなければ分からない…。人生80年、サラリーマンにとって、その半分を過ごさなければならない「会社」。そして、会社に勤める者なら誰もが迎える「定年」。その定年まじかに控えたサラリーマンの心のディテールをハナ肇が見事に演じている。
【市川準監督コメント】
「みんなが会社員であるような、この国の人々の胸の中で、いつもポッカリと口をあけている空洞に眼を注ぎつづけること。本当のことを言えない人々の、言葉を飲んでしまった表情の、雄弁さに、注意を注ぎつづけること。夕方の電車の中で、オーバーの襟に顔をうずめて、貝のように眠っている定年まぢかのサラリーマンの味方でありつづけること。彼らの心に、いつも孤独な者の味方である映画の心を、プレゼントすること。クレージーキャッツの、ハートを、プレゼントすること。『会社物語』で僕が考えたことは、以上のようなことです」(プレスシートより)
『ノーライフキング』
公開日:1989.12.16 上映時間:106分
製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ 新潮社 サントリー 配給:アルゴ・プロジェクト
【スタッフ】製作:岡田裕、佐藤亮一 プロデューサー:新津岳人、松井進、村瀬拓男原作:いとうせいこう「ノーライフキング」脚本:じんのひろあき 撮影:丸池納 美術:斉藤岩男編集:奥原茂 音楽:はやし・こば、鈴木さえ子 助監督:萩庭貞明
【出演】高山良、原田慎也、山崎康平、鈴木さえ子、中村伸郎、イッセー尾形、嶋田久作、斎藤ネコ、大友大輔
★第28回ニューヨーク映画祭招待('91)
テレビゲームにのめり込んでいく子供たちを描いたモダンホラー。人気ゲーム“ライフキングの伝説4”には呪いがかかっていて、その呪いを解けないと家族共々死んでしまうと言う噂が流れている。そんな中、小学4年の少年まことが終業式を迎えた日、ゲームを反対した校長先生がゲーム画面そのものの姿で急死する。やがて“ライフキング”の噂は広がりまことは呪いを解くため“ライフキング”に挑戦する事になるが…。テレビゲームにのめり込んでいく子供たちを描いたいとうせいこうの同名小説を映像化したモダンホラー。
【市川準監督コメント】
「人間の存在感が希薄になってきている時代でしょう。何となく不安で、何もかもリアルじゃない。でも、とにかくこの現実を生きていくしかない、がんばらざるを得ない、そういう事をまこと(高山良)を通して言いたかったんです」(プレスシートより)
『つぐみ』
公開日:1990.10.20 上映時間:105分
製作:松竹富士 全国FM放送協議会 山田洋行ライトヴィジョン 特別協力:FM東京 配給:松竹
【スタッフ】製作:奥山和由、後藤亘、鍋島壽夫 プロデューサー:久保修、吉田多喜男 原作:吉本ばなな 脚本:市川準 撮影:川上皓市 美術:正田俊一郎 編集:荒川鎮雄 スタイリスト:下田眞知子 音楽:板倉文 助監督:月野木隆
【出演】牧瀬里穂、中嶋朋子、白島靖代、真田広之、安田伸、渡辺美佐子、あがた森魚、高橋節子、高橋源一郎、下絛正巳、財津和夫
★毎日映画コンクール監督賞 ★報知映画賞監督賞
★キネマ旬報ベスト9位
吉本ばななの同名ベストセラー小説を、牧瀬里穂主演で映画化。西伊豆の小さな港町。生まれつき体が弱く、甘やかされて育ったわがままな18歳の少女・つぐみ。夏休み、東京の大学に通う従姉妹のまりあが帰ってきて、姉の陽子と3人で穏やかな日々を送っていた。そんなある日、つぐみは美術館に勤める恭一と出会い、運命的なものを感じ恋に落ちる。しかし、つぐみに横恋慕する不良少年たちが恭一に暴行を加え、つぐみの愛犬までも殺してしまう……。
【市川準監督コメント】
「いつ消えてしまうかわからない、かけがえのないものがあって、それが発する、強い「生命力」というものがあるような気がした。いろんな不可能にいらだち、いろんなことに命がけであるような女の子のきらめきと、そのきらめきに心を動かされるものたちの、視線が描けたら、と思った」(プレスシートより)
『ご挨拶』(オムニバス第2話「佳世さん」)
公開日:1991.11.23 上映時間:30分
製作:ソニーミュージックエンタテインメント センタープロモーション 配給:東映アストロ
【出演】米山曼舞子
日常で交わされる挨拶をテーマに、現代に生きる人間の本質と本音を描いた3本立てオムニバスの中の第二話。
【市川準監督コメント】
「僕は出店に座っている女の人が好きで。無意識な群衆が通る脇で、あまり意志のない目で風景を見ているような女の人の姿が割に好きなのかもしれない」(キネマ旬報95年1月下旬号掲載インタビューより)
『病院で死ぬということ』
公開日:1993.7.24 上映時間:100分
製作:中高年雇用福祉事業団 オプトコミュニケーションズ スペースムー テレビ東京 製作協力:主婦の友社 制作:近代映画協会 配給:オプトコミュニケーションズ
【スタッフ】原作:山崎章郎 製作:伊藤宏一、関谷省吾、塚本俊雄 プロデューサー:里中哲夫 企画:水戸祐三、千葉茂樹 脚本:市川準 撮影:小林達比古 美術:間野重雄 編集:渡辺行夫 録音:橋本泰夫 音楽:板倉文 助監督:森宏治
【出演】岸部一徳、山内明、塩野谷正幸、七尾伶子、石井育代、橋本妙、田村廣
★毎日映画コンクール監督賞 ★日本映画批評家大賞作品賞 ★文化庁優秀映画作品賞
★第18回エーテボリ映画祭招待('95) ★第6回ファーイースト映画祭招待('04)
★オルレアン映画祭日本映画ビエンナーレグランプリ('95) ★キネマ旬報ベスト3位
現役の医師・山崎章郎の同名ベストセラーを映画化。ガンの告知を受けた入院患者とその家族の闘病と、ターミナルケア(末期医療)に取り組む医師や看護婦の姿をドキュメンタリータッチで描いた異色ドラマ。ターミナルケアに取り組む岡山医師の許で治療を受ける4人のガン患者とその家族たちそれぞれの迫りくる死へ対峙する姿を描く。
【市川準監督コメント】
「死を描きながらも、生きていたことが、素晴らしかったという視点、死が欠落感とか喪失感ではなくて、死によって、生きてきた充実感を感じる視点を持ちたいと思った」(パンフレットより)
欽ちゃんのシネマジャック『きっと、来るさ』
公開日:1993.10.8 上映時間:15分
製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ 配給:東宝
【スタッフ】製作:岡田裕 プロデューサー:新津岳人 製作総指揮:萩本欽一 脚本:市川準 撮影:深江岳彦、小林達比古、小野寺真 美術:井上真司 編集:荒川鎮雄 音楽:清水一登、れいち 音楽プロデューサー:萩原隆成 助監督:石田和彦
【出演】萩本欽一、高泉淳子
子供たちが自ら手作りの芝居を計画した。舞台を作り、演出をし、ビラを配った。開演当日、子供たちは客が来るのを待つ。一本15分の短編の五本立てで一本につき三百円の入場料を自己申告制で見るというユニークなシステムによるオムニバス作品集。萩本欽一が発案し製作総指揮を務めたもので本作は神戸で公開された。
クレープ
公開日:1993.10.9 上映時間:55分
製作:西友 東映 東北新社 配給:東映
【スタッフ】プロデューサー:竹本克明、田辺隆史、室希太郎 企画:中沢敏明、伊藤満 原作:伊集院静 脚本:市川準 撮影:石井浩一 美術:山田好男 編集:普嶋信一 音楽:長谷川智樹 助監督:永田智春
【出演】田代まさし、南果歩、堀江奈々、渡辺いっけい、大久保鷹、向井田彩子、加倉井えり
別れた娘に14年ぶりに会う男。父として何もしてやれなかった後ろめたさを感じながらも、彼は高校生になった娘の姿に思いを馳せる。失いかけていたときめきが、男の胸に蘇る…。
『東京兄妹』
公開日:1995.1.14 上映時間:92分
製作:ライトヴィジョン 配給:ギャガ・コミュニケーションズ=ライトヴィジョン共同配給
【スタッフ】製作:鍋島壽夫 プロデューサー:吉田多喜男 原案:藤田昌裕 脚本:藤田昌裕、猪股敏郎、鈴木秀幸 撮影:川上皓市、小林達比古 美術:磯田典宏 編集:荒川鎮雄 音楽:梶浦由記 音楽プロデューサー:森康哲 助監督:吉川盛史
【出演】緒形直人、粟田麗、手塚とおる、広岡由里子、小池幸次、角替和枝、白川和子
★第45回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞 ★第46回芸術選奨文部大臣賞
★文化庁優秀映画作品賞 ★キネマ旬報ベスト2位
記憶の中にある失われた故郷「東京」に捧ぐ、名匠・小津安二郎へのオマージュが漂う感動の小品。都電が今も走る、古きよき東京のたたずまいを残した街に、二人きりで暮らす兄妹の日常風景をスケッチ風につづった作品。両親を亡くし、兄一人妹一人で暮らしている日暮兄妹。兄・健一は古本屋に勤め、妹・洋子は高校卒業後、駅前の写真ラボ屋で働いている。兄は家計を支え、妹は家事一切と兄の面倒をみていた。そんな妹を残し、ひとり結婚することにためらいを抱く健一に、恋人の桂子は愛想をつかしてしまう。一方、妹は兄の友人と交際を始めるが……。名匠・小津安二郎へのオマージュが漂う感動の小品。
【市川準監督コメント】
「小津作品へのオマージュと書かれたりして(笑)、自分で言ったわけじゃないけど。ただ笠智衆と原節子に代表されるような、ああいう古い家屋の中の二人。別れ難くてもそれで別れなくちゃならないようなああいう肉親関係と、人の見つめ方。そういう精神みたいなものなんだと思うんですようね。(小津さんの影響が)もしあるとしたら」(キネマ旬報95年1月下旬号掲載インタビューより)
『トキワ荘の青春』
公開日:1996.3.23 上映時間:110分
製作・配給:カルチュア・パブリッシャーズ 製作協力:オプトコミュニケーションズ 近代映画協会
【スタッフ】プロデューサー:塚本俊雄、里中哲夫 製作総指揮:増田宗昭、寺尾和明 脚本:市川準、鈴木秀幸、森川孝治 撮影:小林達比古 美術:間野重雄 編集:渡辺行夫 録音:橋本泰夫 スタイリスト:下田眞知子 音楽:清水一登、れいち 原案協力:梶井純、藤子不二雄A、丸山昭、手塚治虫、石ノ森章太郎 助監督:森宏治
【出演】本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、翁華栄、松梨智子、北村想、安部聡子、土屋良太、柳ユーレイ、きたろう、原一男、向井潤一、広岡由里子、内田春菊、時任三郎、桃井かおり
★ロッテルダム国際映画祭招待 ★キネマ旬報ベスト7位
映画になった漫画家たちの青春。昭和30年代、漫画の神様、手塚治虫が住み、彼に憧れ明日を夢見る若い漫画家、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄らが青春時代を過ごした実在のアパート“トキワ荘”。いまや伝説となったトキワ荘を舞台に、のちに漫画界の重鎮的存在になる彼らの、漫画にすべての情熱を注いだ若き青春時代を描く。
【市川準監督コメント】
「そこの前を通る度に、なにか懐かしさでほっとしてしまうような古い木造モルタルアパートが近所にあったのですが、2年前のある日、出張から帰ると一瞬にして取り壊され消えていた。その瞬間、そこに暮らしていた慎ましい人々も一緒に消えてしまったようなとても寂しい気がしたんですね。アパートの映画を撮りたい、と思ったのはその時でした。そして「トキワ荘」を僕なりに再発見したわけです。そして調べれば調べるほど僕向きの題材だと思えてきました。あまりにも自分の好きな世界だったんで気合いが入りすぎたくらいですが、そういう気合いが、色んなツキをよんで、実現した映画のような気がしています」(パンフレットより)
『東京夜曲』
公開日:1997.6.21 上映時間:87分
製作:衛星劇場 近代映画協会 配給:松竹=松竹富士
【スタッフ】プロデューサー:里中哲夫 企画:鍋島壽夫、丸平光、廣常啓一 原案:市川準 脚本:佐藤信介 撮影:小林達比古 美術:間野重雄 編集:達富喜美男、石井香奈江 録音:橋本泰夫 スタイリスト:下田眞知子 音楽:清水一登、れいち テーマ作曲:市川量也 助監督:森宏治
【出演】長塚京三、倍賞美津子、桃井かおり、上川隆也、はやし・こぱ、朝霧鏡子、花沢徳衛、七尾伶子、安部聡子、前田昌代
★第21回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞 ★第12回高崎映画祭監督賞 ★キネマ旬報ベスト4位
数年前に父母と妻子を残して家を飛び出した男が帰ってき。妻はなじることもなく、優しく迎え入れた。だが、男の帰還は男の妻に密かに想いを寄せていた青年の慕情を募らせ、かつて恋人だった喫茶店の女主人の心を揺り動かす……。四者四様の切ない想いが商店街の人々の人間模様と穏やかな心を揺り動かしていく―。
【市川準監督コメント】
「人は、いつのまにか様々なことを体験して、いつのまにか大人になっていて、いつのまにかしがらみをたくさんひきずって生きている。ある「町」の時の流れが、うっすらと塵が積もるように、人をだめにしてしまう過程を、描きたい、と思っていた。そして、そういう不毛な時間と闘うような、なにくそっというかんじの「大人の恋愛映画」を撮ってみたい、と思っていた。くすんだ町の話なのに、どこか熱に浮かされたようなところのある映画に、なっていればいいと思う」(プレスシートより)
『たどんとちくわ』
公開日:1998.12.5 上映時間:102分
製作:ギャガ・ピクチャーズ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ
【スタッフ】製作:山地浩 プロデューサー:板谷健一、川崎隆 企画:中沢敏明 原作:椎名誠 脚色:市川準、佐藤信介、NAKA雅MURA(ちくわ) 撮影:小林達比古 美術:間野重雄 編集:三條知生 録音:橋本泰夫 スタイリスト:下田眞知子 音楽:板倉文 助監督:井上文雄
【出演】役所広司、真田広之、根津甚八、田口トモロヲ、桃井かおり、小鹿番、安部聡子、弘中麻紀、太田光、田中裕二
★第6回ファーイースト映画祭招待('04)
フロントガラス越しに流れるいつもと変らぬ風景。 毎日繰り返される単調な仕事、溜まるストレス。タクシー運転手の木田は、ある日、乗り込んできた男、安西を拾う。いつものように語り掛ける木田にぶっきらぼうな男の答えが返ってきたとき木田の中で何かが壊れた……。同じ頃、小説家浅見はおでん屋で好物のちくわを注文するが、ないと言われ、なじみの料理屋に入ると、さっぱり売れていない自分の本が置かれてあって……。市川準監督が、椎名誠の原作を基に演出・ストーリーの全てに新機軸を打ち出した、ブラックでシュールなバイオレンス・アクション。
【市川準監督コメント】
「『東京夜曲』みたいな撮り方をしていくと、自分で自分の世界を模倣しているような気になって、自分を一度突き放してみたかった」(キネマ旬報98年12月下旬号掲載インタビューより)
『大阪物語』
公開日:1999.3.27 上映時間:120分
製作:吉本興業 関西テレビ放送 電通 近代映画協会 エス・エス・エム 配給:東京テアトル=「大阪物語」製作委員会
【スタッフ】製作:泉正隆、中澤隆司、勝田祥三 製作総指揮:横澤彪、片桐松樹、吉川英昭 脚本:犬童一心 撮影:小林達比古、蔦井孝洋 美術:山口修 録音:橋本泰夫 音楽:朝川朋之
【出演】池脇千鶴、南野公助、沢田研二、田中裕子、ミヤコ蝶々、剣太郎セガール
★釜山国際映画祭招待 ★キネマ旬報ベスト8位
大阪を舞台に描いた売れない漫才夫婦とその娘の物語。8代目三井のリハウスガールに選ばれた池脇千鶴が、主役の少女を演じた映画デビュー作。
両親に沢田研二と田中裕子が扮し、売れない夫婦漫才コンビを演じる。
私、霜月若菜は14歳。両親は20年以上も続けている売れない夫婦漫才“はる美&りゅう介”。平凡で幸せな毎日と思っていた秋のある日、お父ちゃんの愛人に子供ができて離婚することになった。別れた夫婦漫才は話題になって人気が出るらしいが、“はる美&りゅう介”は例外だった。そして夏、お父ちゃんが突然いなくなった。夏休み、お父ちゃんを探すために私は家を出た……。
【市川準監督コメント】
「『大阪物語』は自分がいつも忘れたことのなかった映画たちのエッセンスが、はちきれそうにつまっている映画です。「想い」ということばは、とてもあいまいなことばですが、こんなに幾重にも、自分の「想い」がこもってしまった映画は、ありませんでした。この熱い「想い」が、人の心に届かないはずはない。と、思いたいです」(パンフレットより)
『ざわざわ下北沢』
公開日:2000.7.7 上映時間:105分
製作:パグポイント 企画:シネマ・下北沢 市川準事務所 配給:シネマ・下北沢
【スタッフ】製作:宮本まさ江、八木桂子 製作総指揮:畠中基博、畠中鈴子、荒川礼子、本多良行、原田満生 アソシエイトプロデューサー:畠中節代 脚本:佐藤信介 撮影:蔦井孝洋 美術:原田満生 編集:三條和生 音楽:清水一登、清水れいち ラインプロデューサー:木村利明 照明:中須岳士 録音:橋本泰夫 助監督:高橋正弥
【出演】原田芳雄、北川智子、小澤征悦、イングリッド・フジ子・ヘミング、有吉康平、りりィ、本多一夫、八反田勝就、中村靖日、唯野未歩子、岸部一徳、柄本明、角替和枝、樹木希林、渡辺謙、鈴木京香、豊川悦司、田中麗奈、広末涼子、田中裕子、テリー伊藤
★日本映画批評家大賞作品賞 ★ペサロ映画祭招待
オール下北沢ロケで描いた、下北沢に住む人々の人間ドラマ。 古いものと新しい物が入り混じって、老若男女、いろんな人々が狭い街で、肩を触れ合いながら過ごしている下北沢。不思議な存在感があるこの街、下北沢をライブ感あふれる映像で、生きている人々をまんなかに据えて描いたスケッチブックのような人間模様。
【市川準監督コメント】
「お芝居が好きで、よく観に来ていたし、劇団の打ち上げで飲んだりはしてたんだけど、下北沢を描くことが、なんかとても恥ずかしいなあと。この恥ずかしさを消すにはどうしたらいいんだろうって、かなり悩んだ。そして、ある日、とにかく下北沢であれ、札幌であれ、博多であれ、どの街でも自分の作りたいものを作ればいいんだって思ったのね。舞台なんて関係ないって思って。そこから何かが自分の中で動き出したと思う」(パンフレットより)
『東京マリーゴールド』
公開日:2001.5.12 上映時間:97分
製作:東京マリーゴールド製作委員会 電通 テンカラット オメガプロジェクト シィー・スタイル 配給:オメガ・エンタテインメント
【スタッフ】製作:塩原徹、小林栄太朗、横濱豊行ほか プロデューサー:福山亮一、若尾一彦、石関克巳 協力プロデューサー:川崎隆、増田悟司 企画:遠谷信幸、立林茂之、牛山拓二 原作:林真理子 紀伊國屋書店刊『東京小説』より「一年ののち」 脚本:市川準 撮影:小林達比古 美術:間野重雄 編集:三條知生 音楽:周防義和 音楽プロデューサー:丸山修 スタイリスト:下田眞知子 企画協力:大久保裕一、田中章弘 照明:中須岳士 制作担当:毛利達也 録音:橋本泰夫 助監督:高橋正弥
【出演】田中麗奈、小澤征悦、斉藤陽一郎、小林沙世子、長曽我部蓉子、螢、石田ひかり、寺尾聰、樹木希林、三輪明日美、辻脩人、康すおん、井川修司、渡辺香奈、小野麻亜矢、菅原香織
★第6回ファーイースト映画祭招待('04)
林真理子の短編小説「一年ののち」を基に描いた、一年限りの恋物語。 つきあっていた彼と別れたばかりのエリコは気分転換にと転職しては見たものの、その退屈な日々は以前とあまり変わらなかった。そんなある日、エリートサラリーマンとの合コンに出かけたエリコは不思議な雰囲気を漂わすタムラという男に興味を持つようになる。数日後、エリコからのデートの誘いに応じたタムラだったが、彼はアメリカに留学中の恋人がいると告げる……。「一年でいいからつき合って」というエリコ。そう言ってしまった瞬間から、エリコの期間限定付劇的東京大恋愛が始まった……。エリカに田中麗奈、タムラに小澤征悦、味の素のCMで田中と息の合った母娘を演じた樹木希林が母親に扮している。
【市川準監督コメント】
「今回の作品で撮影した東京は、いままでと違ったものかもしれない。今回、まだまだ撮り残している(東京の)アングルや場所があると実感しました。新しいものと古いものが奇妙に混在したり融和していて、とにかく面白い。極端にいえば、死ぬまで撮り尽くせないと思いましたね」(キネマ旬報01年5月上旬号掲載インタビューより)
『竜馬の妻とその夫と愛人』
公開日:2002.9.14 上映時間:115分
製作:東宝映画 配給:東宝 東宝・博報堂提携作品
【スタッフ】製作:富山省吾 プロデューサー:市川南、前田光治 エグゼクティブプロデューサー:森知貴秀 アソシエイトプロデューサー:春名慶 企画:鍋島壽夫 原作・脚本:三谷幸喜 撮影:小林達比古 美術:山口修 編集:三條知生 スタイリスト:下田眞知子 音楽:谷川賢作 照明:中須岳士 録音:橋本泰夫 助監督:井上文雄
【出演】木梨憲武、中井貴一、鈴木京香、江口洋介、橋爪功、トータス松本、小林聡美
★第7回釜山国際映画祭招待 ★第5回台北映画祭オープニング上映('03)
映画・舞台・ドラマなどで笑いを追求し続ける、いまや日本を代表するコメディ作家・三谷幸喜が2000年に書き下ろした舞台劇を、市川準が映画化。竜馬暗殺から13年後の横須賀を舞台に、亡き竜馬をめぐって4人の男女が繰り広げる一大騒動を可笑しくもペーソスたっぷりに描いたラブ・コメディ。竜馬が暗殺され、明治が始まり13年が過ぎた。新政府の役人・菅野覚兵衛は、師弟関係にあった坂本竜馬の十三回忌を催すため、竜馬の元妻である義理の姉おりょうを訪ねる。おりょうはみすぼらしい男・西村松兵衛と電撃再婚し、おんぼろ長屋で貧乏生活を送っていた。しかし、実はこの時すでにおりょうには竜馬にそっくりの愛人・虎蔵がいて、二人は駆け落ちを企てていた……!
【市川準監督コメント】
「僕は前からいろんな人に言われていたんですが、CMを作るとあんな面白いものを作るのに、なぜ映画になると真面目なものを作ってしまうんだ、と。そしてプロデューサーから笑わせるものを真剣に映画でやってみませんかと声をかけてもらったんです。その時、ふっと頭をよぎったのが、三谷さんがお書きになったこの舞台だったんです」(パンフレット市川準×三谷幸喜対談より)
『トニー滝谷』
公開日:2005.1.29 上映時間:75分
製作:WILCO:配給:東京テアトル 配給協力:スローラーナー
協力:ジェネオン・エンタテインメント セルロイドドリームス
【スタッフ】製作:橋本直樹、米澤桂子 プロデューサー:石田基紀 著:村上春樹 「トニー滝谷」(文藝春秋刊「レキシントンの幽霊」所収)より 脚本:市川準 撮影:広川泰士 美術:市田喜一 音楽:坂本龍一 照明:中須岳士 録音:橋本泰夫 ナレーション:西島秀俊
【出演】イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、四方堂亘、谷田川さほ、小山田サユリ、山本浩司、塩谷恵子、猫田直、木野花
★第57回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞 ★国際批評家連盟賞
★ヤング審査員賞('04) ★サンダンス映画祭ノミネート
★ラス・パルマス国際映画祭審査員特別賞 ★第20回高崎映画祭グランプリ('06)他
村上春樹の短編集『レキシントンの幽霊』に収められた同名小説を映画化した、イッセー尾形、宮沢りえ主演の切ない愛の物語。 トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった。太平洋戦争当時、上海のナイトクラブでジャズマンをしていた父・滝谷省三郎は、終戦後、息子が生まれるとトニーと名付けたのだ。彼が生まれて3日で母が死に、孤独な幼少期を送ったトニーは、やがて美大に進む。細部まで正確に写し取る彼の絵はどこまでも無機的だった。ずっと孤独に生きてきたトニーだったが、孤独でも平気だと思っていた。デザイン会社に就職後、独立してイラストレーターとなったトニーは、彼の家に出入りする編集者の一人、小沼英子に恋をする。でも、好きで好きでたまらなくなってしまったトニー。やっと出会えた最愛のひと。でも、幸福は、あっという間に彼の手をすり抜けてしまい……。一人の女性の出現によって初めて愛を知り、彼女を失うことで初めて孤独というものを実感する男の姿を静謐なタッチで描く。
【市川準監督コメント】
「僕たちが日常生活している世の中を眺めてみると、あの衣裳部屋に近いんじゃないかと思うんです。多くの物、しかも一生かかっても買えない量の物、叶わない物に包囲されて、それがみんな「あなたにぴったりですよ」「あなたにぴったりですよ」と言い続けているわけじゃないですか。その時の、孤独感、ひとりぼっち感みたいなもの、それが今を生きている人の心であるような気がするんですね」(パンフレットより)
『あおげば尊し』
公開日:2006.1.21 上映時間:82分
製作:AZOTH 配給:スローラーナー
【スタッフ】製作:松田眞美子 プロデューサー:鍋島壽夫 原作:重松清『あおげば尊し』(新潮社刊『卒業』より) 脚本:市川準 撮影:小林達比古 美術:山口修 編集:三條知生 スタイリスト:下田眞知子 音楽:岩代太郎 スクリプター:石山久美子 照明:中須岳士 装飾:平井浩一 録音:橋本泰夫 監督補:早川喜貴
【出演】テリー伊藤、薬師丸ひろ子、絵沢萠子、大倉孝二、入江雅人、麻生美代子、加藤武
直木賞作家・重松清の同名小説を映画化した、現代における“死”の問題を真摯に見つめたドラマ。末期ガンで余命幾ばくもない父の最期を自宅で看取ることにした一家が抱える迷いや葛藤を等身大で描き出す。主演はTVでの辛口コメントや斬新な企画等、バラエティ番組などで活躍するテリー伊藤、共演に薬師丸ひろ子。 小学校教師の光一は、末期のガンで入院していた父が余命3ヶ月であると主治医から告げられる。そこで光一たち家族は、父に残された日々を自宅で介護することに決める。一方、その頃、光一の受け持つ5年生のクラスではネットの死体写真を見たり斎場に忍び込んだりと死体に強い興味を抱く生徒がいた。死の意味をどうやって生徒たちに教えればいいのか悩む光一。やがて光一は、同じく教師をしていた父に、思い切ってある提案をするのだった……。
【市川準監督コメント】
「自分たちがよかれと思ってきた世の中作りも、本格的に見直さざるを得なくなっている。『あおげば尊し』という歌は、そういうある佳き時代というものを象徴していて、この映画は、それとちゃんとお別れしたい。ある時代に対する鎮魂みたいな声が歌から聴こえるようにした。それをクロージングで感じてほしいと思いました」(キネマ旬報06年1月下旬掲載インタビューより)
『あしたの私のつくり方』
公開日:2007.4.28 上映時間:97分
製作:日活 博報堂DYメディアパートナーズ ソニーミュージックエンタテインメント スカパー・ウェルシンク 講談社 朝日新聞社 テレビ朝日 配給:日活
【スタッフ】製作:佐藤直樹、安永義郎、渡辺純一、大塚徹哉、富田裕、亀山慶二、プロデューサー:角田豊、川上竜生、細谷まどか 企画:椋樹弘尚、藤巻直哉 原作:真戸香『あしたの私のつくり方』(講談社刊) 脚本:細谷まどか 撮影:鈴木一博 美術:山口修 編集:三條知生 音楽:佐々木友理 音楽プロデューサー:和田亨 音楽監修:周防義和 主題歌:シュノーケル 照明:中須岳士 製作担当:大沢忠生 録音:橋本泰夫、藤丸和徳
【出演】成海璃子、前田敦子、高岡蒼甫、近藤芳正、奥貫薫、田口トモロヲ、石原真理子、石原良純、柄本時生、桜田通、柳英里沙
★第2回フランスKINOTAYO映画祭グランプリ('07)
10代の少女たちが、本当の自分を求めて揺れ動くさまを瑞々しく切り取った真戸香の同名小説を映像化した思春期ストーリー。 主演に今、最も注目を集める成海璃子と映画初出演の“AKB48”の前田敦子が思春期に揺れ動く少女を瑞々しく演じる。 学校では仲間はずれにされないよう目立たず、家では離婚した両親に気遣って良い娘であろうとする少女・寿梨。自分を偽ることに違和感を抱いていた寿梨にとって、クラスで人気者の日南子は憧れの存在だった。ところが、中学受験に失敗した寿梨が久しぶりに学校に戻ってみると、日南子は学級会の進め方が原因で突然クラス中から無視される存在になっていた。その後中学校でもイジメられていた日南子を気にしながらも何も出来ずにいた寿梨。やがて高校生となった彼女は、日南子が転校していったことを知ると、コトリと名乗って自作の物語を日南子に携帯メールで送るようになる。それは転校生の少女ヒナが人気者になるためのノウハウが綴られた“ヒナとコトリの物語”というものだった……。
【市川準監督コメント】
「自分が自分であることを引き受けろ、自分に負けるな、自分を見捨てちゃいけないということを伝えたかったんです。世界はもっと広いんだと気付いてもらえるような作品にしたいと思って作りました」(PHPカラット07年5月号掲載インタビューより)
『buy a suit スーツを買う』
公開日:2009.4.11 上映時間:47分
製作:市川準事務所 配給:市川準事務所+スローラーナー 協力:Tower Film、McRAY、カモメファン
【スタッフ】監督・脚本:市川準 助監督:末永智也 制作:宍戸貴義 衣装:宮本まさ江 音楽:松本龍之介 整音:橋本泰夫 音響効果:佐々木敦生
【出演】砂原由起子、鯖吉、山崎隆明、三枝桃子ほか
★第21回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 作品賞
東京・秋葉原。 同僚のスミちゃんと共に大阪から上京し、秋葉原の駅に降り立つユキ。スミちゃんと駅で別れたユキは駅前の大きなビルの前で、蒸発した兄・ヒサシの大学時代の先輩・山口と落ち合う。今は広告代理店で仕事をしているという山口。ユキは、まったく消息がわからなかったヒサシから最近手紙が届き、住所が書いてあったことを話す。ヒサシの思い出など話す山口は、やおらノートパソコンを開きヒサシ宛に手紙を書きはじめる。これからヒサシに会いに行くユキに山口はプリントした手紙を渡し「会ったらよろしく」と、忙しそうにビルへ戻って行った。ヒサシの手紙の住所をたどってバスに乗ったユキ。たどり着いたところは吾妻橋のたもとだった。隅田川に添って点々とダンボールの家がある。片隅のひとつからゴソゴソと人が出てくる。それは兄ヒサシだった。やがてとつとつと話し始める兄妹。ふと、今は浅草にいるヒサシの元妻・トモ子に、二人で今から会いに行こうという話になる…。
『TOKYOレンダリング詩集』
◎監督自身がパソコンで全編の編集を行った習作
公開日:2009.4.11 上映時間:25分(『buy a suit スーツを買う』併映)
製作:市川準事務所 配給:市川準事務所+スローラーナー
【スタッフ】撮影・編集:市川準 音楽:松本龍之介
※「buy a suit スーツを買う」DVD同時収録作品
「人がいる場所」「人と流れる時間」「人が織りなす詞(コトバ)」。
その場所に立ち、その時間を感じ、そのコトバをのせて東京に浮かび上がる情緒を“レンダリング”した映像作品。2008年、春先の東京。市川準が日常における“人を観る時間”の中で切り取ったいくつもの風景。
『TOKYOレンダリング詞集』は『buy a suit スーツを買う』と同時に制作され、市川準自身がパソコンで全編の編集を行った。
作品データ:「市川準」(河出書房新社・刊)より、転載
市川準監督コメント:「キネマ旬報」(キネマ旬報社・発行)、「PHPカラット/07年5月号」(PHP研究所・発行)、他、各作品プレスシート、パンフレットより、転載